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武田 礼子 特別任用准教授「留学準備演習」

— アクティブラーニング(寸劇?ディスカッション?振り返り)を通して深める“異文化理解” —

武田 礼子 特別任用准教授「留学準備演習」

教員基本情報

氏 名:武田 礼子( たけだ れいこ)

所 属:国際センター

職 名:特別任用准教授

専門分野:英語教育、批判的思考

授業概要

対象者:全学部1~4年生

授業形態:演習

実施学期:2019年度後期

履修者数:35 名

※ページ内のpoint!は授業のポイントです
※黄色にハイライトされた用語はクリックで用語説明が表示されます

授業内容と取材当日の授業状況について

 本授業は、全学共通教育科目における国際交流科目群に位置づけられ、全学部1~4年生のうち留学を希望する学生を対象に開講されている。また、SIEPの必修科目とされている。授業の到達目標は、異文化間コミュニケーションの学びを通して、異文化への気づきと自文化に対する新たな視点を持ち、留学先の国を理解するための予備知識を身につけることで、適応し行動できるようになることである。授業では、講義をはじめ現地でのあらゆる状況を想定したスキット(寸劇)やディスカッション、また書くことを通したリフレクション(振り返り)などが行われる。

取材当日(2019年11月20日)の授業は、以下の流れで進められた。

授業の流れ

①「Critical Incident」の概念についての講義
→グループディスカッション→全体共有<20分>

②「高文脈?低文脈文化」の概念についての講義(復習)とグループワークの説明<15分>

③グループワーク(寸劇作成)<25分>

④各グループのロールプレイ(寸劇発表)<20分>

⑤講義?振り返り<10分>

武田 礼子 特別任用准教授「留学準備演習」

 この日の授業は、「Critical Incident(クリティカル?インシデント)」(以下、CI)の概念についての講義から始まった。受講者には、次週(11月29日)開催の留学生懇親会に参加し、各自でCIを見つけ出し、400字の小レポートを作成する課題が出されていた。CIの概念に関する講義の後、理解をより深めるためのグループディスカッションが以下の事例をもとに行われた。

 ある会社の入社式での出来事でした。新卒社員20人以外に新入社員に初めての外国人を2人迎えました。入社式が終わったあとの集合写真の撮影の前に、カメラマンがこのように言いました。
   「皆さん、座ってください」
 椅子が8脚しかない最前列の中央に社長が座りました。新卒社員は社長の後ろに立つなど、撮影のために移動しました。ところが、新人の外国人社員2人が社長の右隣りに座りました。
 その様子を見た他の日本人社員は、一般的にどのように感じるでしょうか?想像してみましょう。

 受講者たちは、4人ずつのグループに分かれると、すぐに討議に入り、活発な議論を交わした。その後の全体共有では、「多くの日本人は、遠慮をして後ろに立つだろうが、新入社員のための入社式なのだから、何で前に座ってはいけないのだろう」「私たちがふだん慣れているモノサシで、自分たちとは異なる背景や価値観を持っている人の行動を良い悪いなどと判断してよいのだろうか」などの意見が発表され、受講者全員での議論が交わされた。
 つづいて、2週間前の授業で扱われた内容の復習として、「高文脈文化と低文脈文化のコミュニケーションを取る人物が登場するスキット(寸劇)を作成してパフォーマンスする」ように指示が出された。寸劇完成後には、皆の前でグループごとに披露するが、先生からはシチュエーションのサンプルや注意点等の説明があり、早速、学生たちは、4人ずつのグループでワークに取りかかった。
 8グループによる寸劇発表は、「誕生日での年齢の聞き方」「ルームシェアでの気遣いのしかた」「言いづらいことの伝え方」など、様々な場面を想定したパフォーマンスが行われ、熱のこもった演技に時々大きな笑いも起こっていた。
 この発表の後、振り返りを中心とした講義に移った。先生からは「寸劇には、どのようなステレオタイプが現れていたか?」という問いかけがなされ、受講者は英文テキストを参照しながら、一人ひとりが深く考えを巡らしていた。最後に、異文化間コミュニケーションにおける相違の解決に必須となる言語的?非言語的コミュニケーションの方法についての解説があり、90分間の授業があっという間に終わった。

活発なグループディスカッション
活発なグループディスカッション

教員インタビュー(Q&A)

Q.授業のポイントを教えてください。

A. この授業では、グループディスカッションやその結果を発表することを定期的に行います。また、ゲストスピーカーを迎えたり、動画を視聴することで異文化理解を高めるなど、講義以外の方法を念頭に置いています。このことで、受講者は高次の思考である分析や評価も行い、議論を通して自分の価値観や考えを表現できるようになると考えています。

Q. なぜ寸劇を行うのですか?

A. 異文化間コミュニケーションのポイントはSIMPLEだけど、EASYではありません。頭で分かっているだけではなく、実践に移せるかどうかがとても重要です。寸劇は、そのことを学ぶ効果的な手法です。寸劇の台詞作りや最終的なパフォーマンスの内容を見ると、受講者は深く、対話的で主体的な学びができているように思います。

Q. この授業を通して学生に期待していることは何ですか?

A. 留学に関心を寄せる学生は多くいますが、そのための準備ができておらず、せっかくの留学する機会とのマッチングができていない現状があります。この授業がその役割を果たせたらよいと考えています。

学生インタビュー(Q&A)

Q. この授業のよいところは何ですか?

A. スキンシップの度合いや、「美意識」等の抽象的なものに対する捉え方など、そこに長く住み、感覚として身についているようなことを事例として授業で扱ってくれます。異文化理解を学べる機会はあまりないので、とてもよい授業だと思っています。

A. 他のAcademic Skillsの授業では、英語の4技能を中心に学びますが、この授業では、異文化理解という自分が実際に体験しないと分からないようなことが題材として多く取り上げられるので、とても新鮮に感じます。

Q. 授業での課題はどのようなものがありますか?

A. 教科書の英文を事前に読んでくるようにとの課題がよく出されます。分からない単語はひたすら調べて、理解できない英文の箇所を無くすようにしています。授業では、英文テキストを理解した前提でTF(True or False)クエスチョンや、関連したリスニング問題が出されるので、予習をきちんとしなければなりません。また、先生が複数のクエスチョンを投げかけてくれて、レポートを書くこともあります。それも、答えが一つに定まったようなものではなく、自分が抱いている気持ちや違和感、価値観などがテーマとされます。

Q. この授業を受けて変化したことはありましたか?

A. 海外のテレビCM(例えばテレビショッピングなど)ではものすごい量の情報が流されますが、一方、日本のCM(例えば車のCMなど)ではナレーションが入らずイメージだけを流すようなものがあります。これが、高文脈文化と低文脈文化の違いだということを身近に感じ、さまざまな物事を視点を変えてみることができるようになりました。


※インタビューは2名の学生にご協力いただきました。